警察に出頭(自首)するべきか

犯罪行為をしてしまった場合、自ら警察に出頭すると、逮捕されにくくなります。

もちろん、その後の取調べでは犯罪をきっちり自白する必要がありますから、結果的に、処罰される可能性が高まることもありますが、とにかく逮捕されないことを最優先に考えるならば、自ら警察に出頭することは、極めて有力な選択肢となります。

今回は、自ら警察に出頭することの意味や目的について弁護士が解説しますので、犯罪行為をしてしまってお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。

1.警察に出頭することの効果

自ら警察に出頭することには、次の2つの効果があります。逮捕されにくくなる効果と、処罰される可能性が高まる効果です。

前提として、逮捕されることと処罰されることが全く異なるということを念頭に置く必要があります。ごく大雑把にいえば、逮捕は、処罰を受けさせるための手段に過ぎず、処罰そのものではありません。この点は誤解されやすいので気を付けてください。

1-1.逮捕されにくくなる

人を逮捕するには条件があります。それは、大まかに言うと、2つです。まず、犯罪をした疑いがあること、次に、逮捕しなければ逃げ隠れしたり証拠隠滅に及んだりする疑いがあることです。

どちらも、それなりに高い水準の疑いが必要であり、ほんの少しでも疑わしければ条件をクリアするというものではありません。そして、これが重要なのですが、この2つを同時にクリアしなければ、人が逮捕されることはありません。例えば、犯罪をしたことについて非常に強い疑いがあったとしても、それだけで逮捕されるわけではないのです。

さて、自ら警察に出頭すると、そのような人は、別に逮捕しなくても逃げ隠れしないし、証拠隠滅に及んだりもしないだろうと評価されやすくなります。

もちろん、出頭した後は、自らの犯罪についてしっかりと自白することになるわけですから、犯罪をした疑いは増すことになります。しかし、先ほど説明したとおり、犯罪をした疑いがあるだけでは、人は逮捕されません。

つまり、同時に2つクリアしなければならない条件のうち、1つはクリアされる一方で、もう1つはクリアされなくなることが見込まれるのです。したがって、結果的には、逮捕されにくくなります。比喩的にいえば、肉を切らせて骨を絶つ、といったところでしょうか。

もちろん、たとえば殺人罪のような極めて重大な犯罪については、それだけ非常に重い刑罰を科されることが見込まれますから、たとえ自ら警察に出頭したところで、逃げ隠れしたり証拠隠滅したりすることへの疑いは払拭されないでしょう。したがって、こうした重大な犯罪については、逮捕を回避することは困難です。

ですが、少なくとも執行猶予付きの判決が確実に見込まれるような事件であれば、自ら警察に出頭することによって、逮捕される可能性は著しく低下するものと考えられます。

1-2.処罰される可能性が高まる

先程も説明したとおり、自ら警察に出頭して犯罪を自白すると、犯罪をした疑いは増します。これは、とりもなおさず、処罰される可能性が高まることを意味します。

事件の性質によっては、事件発生後、非常に長い期間が経過しても、警察が全く犯人に辿り着けないということがあります。また、そもそも事件の発生が警察に発覚しないまま時間が過ぎていくということも稀ではありません。誰かが警察に通報しなければ、警察も事件の発生を知りようがありません。

こうした場合に、自己の犯罪事実を誰にも打ち明けずにいれば、そのまま処罰されずに済んでしまうということがあるのは否定できません。

たしかに、自ら警察に出頭して素直に罪を認めるという行いは、反省の態度を示したものと評価されます。こうして反省の態度を示したことは、処分や判決にあたって、有利に斟酌されます。特に、出頭した時点で犯罪の発生やその犯人が警察に発覚していない場合は、通常、法律上の自首(刑法42条1項)が成立して、刑の任意的減軽事由になります。

ですが、起訴猶予や執行猶予を得るためには、何よりもまず、被害者に対して事件に相応しい金額の賠償金を支払うことが決定的に重要です。単に出頭して反省の態度を示しただけで、起訴猶予や執行猶予を得られることが確約されるわけではありません。

そのため、自ら警察に出頭したとしても、その後、被害者から賠償金の受け取りを断られてしまえば、逮捕はされなくても起訴はされる(前科は付く)という結果になることもあります。

2.どのような場合に出頭するべきか

2-1.逮捕されないことを優先する場合

まず重要なのが、逮捕されないことと処罰されないことのどちらを優先するか決めることです。

先程説明したとおり、自ら警察に出頭すれば、通常、処罰される可能性は高まるのですから、とにかく処罰されることだけは避けたい、処罰されないことを最優先にしたいと考えるのであれば、出頭するべきでないことが多いでしょう。

逆に、逮捕されないことを最優先にしたい、前科が付いても構わないのでとにかく逮捕だけは避けたいと考えるのであれば、自ら警察に出頭することが極めて有力な選択肢になります。

石川県では、逮捕されると、ほぼ確実に新聞で実名報道されてしまいますから、逮捕されることで被る不利益は、身体拘束にとどまらず、計り知れないほど大きくなります。インターネットに名前が載ってしまうと、デジタルタトゥーとして半永久的に残り続けることにもなります。

その一方で、有罪判決や略式命令が実名報道されることは、むしろ例外的ですから、前科の存在は、日常生活上は透明なままであり、可視化されないのが通例です。

そのため、逮捕されないことを優先すべき場面は、かなり多いのではないかと考えられます。このような場合に、自ら警察に出頭することは極めて有力な選択肢になります。

2-2.犯人であると特定されそうな場合

先程は、事件が迷宮入りしてしまった場合や、そもそも事件の発生が警察に発覚しなかった場合には、自ら警察に出頭しなくても処罰されないであろうことを説明しました。

裏を返せば、自ら出頭しなくても、いずれ確実に犯人であると特定されるという状況なら、出頭をためらう必要もなければ、後悔する必要もありません。このような場合には、むしろ急いで出頭するべきです。手をこまねいているうちに警察の側からあなたに接触してきたら、もはや手遅れです。

こうした場合の出頭が有効な手段になるかどうかは、出頭しなくても犯人であると特定されてしまう可能性がどれほどあるかにかかっています。これは極めて専門的な判断になりますので、弁護士の助言を受けることを強くおすすめします。

3.弁護士に依頼するメリット

自ら警察に出頭する場合には、弁護人を選任して、事前の準備や出頭への同行を依頼することを強くおすすめします。

まず、効果的な出頭をするためには、事前の準備が必要です。犯罪の内容をあらかじめ文書化しておくとともに、犯罪の証拠を自ら収集・整理して、これらを出頭する際に持参すると、円滑に手続を進めることができますが、こうした作業を弁護士の助言なくして的確に行うことは難しいと思います。

特に、出頭して何を供述してくるのかが重要な問題です。自白の内容が不自然だと、警察から、虚偽供述をして捜査を妨害・かく乱する目的があるのではないかと疑われてしまいます。取調室でどのような話をしてくるのかについても、あらかじめ弁護士の助言を受けておくことが不可欠であるといえるでしょう。

また、警察に出頭する際に、弁護人が同行し、取調べの間、警察署で待機することによって、困ったときにはいつでも相談することができるという安心感も得られると思います。

当弁護団では刑事事件に力を入れて取り組んでおります。警察への出頭についても、是非ともご依頼ください。実は非常に多くの事件で、自ら警察に出頭することにより、逮捕される可能性は著しく低下します。お困りの方はご相談ください。

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